『The Ascent』レビュー:これ以上ないほど美しく、激しく、歪なサイバーパンク・アクションシューター Close IGN Logo Comments
『The Ascent』はちょっと感じの悪い高級レストランの高級料理のようなゲームです。店の内装はとてもきれいです。出された料理は見た目も味もよいです。しかし店員の愛想はあまりよくないです。店の中をよく見ると掃除が行き届いていない場所があります。キッチンから怒声が聞こえてきます。さて、あなたはそれでも料理を楽しめるでしょうか?
本作は一言でいえばツインスティックシューターです。様々な銃火器と補助の装備を駆使して、襲ってくるチンピラやメカを片っ端から肉塊と鉄くずに変えていく、オールドスクールの暴力アクションです。撃って、ぶっ殺して、経験値を得てレベルアップ、スキルポイントを割り振ってリロード速度や体力最大値を強化、そしてまた敵を撃ちまくりましょう。
メインの銃器に加えて、オーグメントと呼ばれるサイバネ拡張装備をキャラクターに組み込んで使うことも可能です。これは手術による身体改造で、手持ちの銃器では不可能な、強力な攻撃や補助行動をとることもできます。とにかく本作は、撃って倒して撃って倒してのゲームです。
本作は基本的にオールドスクールなアクションシューターですが、注目すべき特色がひとつあります。遮蔽物と、それを利用したカバーアクションです。
通常の射撃は、立っている相手、しゃがんでいる相手に当たりますが、マップに点在する遮蔽物にも当たります。射撃時に高射キーを押すと銃を高く構えて、高い位置に向かって射撃をすることができます。3人称視点シューターのブラインドファイア的な動きと言えばいいでしょうか。このアクションを使っての射撃は、遮蔽物としゃがんでいる相手の上をすり抜け、立っている相手に当たります。プレイヤーはこのシステムを利用して、敵の攻撃を遮蔽物で防御したり、あるいは遮蔽物の向こうにいる敵を撃ち抜いたりすることができます。
しかし本作の戦闘は、遮蔽の後ろから撃っていれば勝てるというものではありません。敵は積極的に遮蔽物を回り込んでプレイヤーを襲ってきます。そしてカバーと高所射撃を利用できるのは敵も同じです。周りの状況を常に見ながらカバー位置を変えながら、敵の数を確実に減らしていくことが大事になるのです。
文字で書くとシンプルですが、実際にプレイしてみると驚くほどに楽しく、TPS系カバーシューターとはまた違う、スピーディで暴力的なプレイが気持ちの良い体験です。
この戦闘メカニクスにより、『The Ascent』は、似たりよったりになりやすいツインスティックシューターのジャンルのなかで、ハッキリとこのゲームならではの面白さを提供できています。
さて。本作のような設定のゲームでは、夜の街に降り注ぐ紫色のネオンの光や、怪しい日本語の看板、空を飛ぶ車や飛行船の広告といった、『ブレードランナー』風のビジュアルが採用されがちです。しかしそれらは文字通り100回繰り返されているクリシェです。定番になり得るくらいの強さはある題材ですが、ほとんどの作品は「いつものあの感じ」以上のものを提供できているとは思えません。しかし『The Ascent』を世の多くのサイバーパンク風ゲームたちと一緒に並べるのは少し難しいです。
本作の舞台は大企業アセントグループが支配/管理するアーコロジーです。ここには様々な星から希望を求めて移住してきた労働者たちが、グループとの契約にしたがって終わりのない労働を繰り返しながら生きています。「シャドウラン」や「スター・ウォーズ」のような作品に少しヒネリを加えたものと考えればわかりやすいでしょうか。
『The Ascent』開発チームは、このローライフとハイテクが交差する世界を、豊かな想像力とAAA級のグラフィックで完璧に描写しています。たとえば、様々な種族の労働者たちが集う繁華街があります。コインと欲望が飛び交う巨大カジノがあります。怪しいレストランの地下の怪しい食肉処理施設があります。水没した都市の廃ビルに隠されたハッカーのアジトがあります。都市の最上部の支配者たちが住む天井都市があります。そしてそれぞれの場所には多くのNPCがいて、それぞれの人生を送っています。特別に広いわけでもなく、目に見えるもの全てにインタラクトできるわけでもないのですが、行けるところ、見えるところは全てしっかりと作り込まれています。
ミクロからマクロまで、隙なくサイバーでゴージャスなマップは、現在世に出ているサイバーパンクを謳ったゲームのなかで最も美しく見応えのあるもののひとつです。本作はwindows、Xbox SeriesX/S、Xbox One向けに配信されていますが、本作のグラフィックを心置きなく楽しむならできるならより高いスペックのハードで遊ぶのがいいでしょう。
このゴージャスなマップで行われる激しい銃撃戦は、サイバーパンクファン/暴力ゲームファンへの最高のご褒美です。ダンスクラブのピンク色の光のなかで、サイバー商店街のなかで、逃げ惑う一般労働者たちを横目にバーカウンターを挟んで大勢の敵と撃ち合うことは、どんなことよりも素晴らしいです。
特にゲームシステムを理解して装備も揃ってくる後半は最高です。プレイヤーは最終的に、支援メカを召喚し、太いレーザービームを射出し、火炎放射でサイバネちんぴらをすれ違いざまに焼き尽くすようになります。ゲームの進行と戦闘スキルの習熟とともにカバーシューターのタクティカルな楽しさは少し薄くなりますが、強い装備でゴリゴリと突き進んでいくのはまた違った面白さがあります。この戦闘スタイルの変化のグラデーションは、クリアまでの~20時間ほどのプレイを楽しいままにし続けるでしょう。
オーディオ面もバツグンに優れています、BGMのヘビーなシンセは戦闘をしっかり盛り上げてくれます。鋭くヌケのいい発砲音は、わたしが本作を夢中になってプレイする大きな理由のひとつです。大きめの音量でゲームを楽しむことをおすすめします。
そんなわけで、『The Ascent』はエキサイティングな戦闘と本当に美しいビジュアルを持った素晴らしいゲームです。しかし完璧ではありません。本作はいくつかの問題を抱えています。そのひとつがストーリーです。
本作のキャンペーンは、都市の管理者であるアセント・グループが破産するところから始まります。この企業の崩壊は何のために起こったのか?誰が仕組んだのか?この大事件をめぐる陰謀と戦いの物語が「フラットライナー」、「肉」のような、ウィリアム・ギブスン作品から持ってきたようなスラングとともに語られていきます(最初のミッション名は「アーコロジー・ブルース」です)。プレイヤーはグループに雇われているひとりの労働者として、上司からストーリーに沿った依頼を受け、道中の敵を倒しながらマップの特定の場所に行き依頼を達成、また依頼を受けて……というのを繰り返していきます。
ストーリーそのものにはあまり問題はないのです。固有名詞が渋滞していてわかりにくいなどの問題はありますが、話の筋じたいはシンプルでおもしろいですし、メインミッションに関わってくるキャラクターはみなフルボイス、声優の演技も上等、テキストも翻訳もしっかりしています。山のような用語集も読み応えがあります(というかこれを読まないとストーリーがちんぷんかんぷんです)。
問題は、このストーリーがプレイヤーにもゲームプレイにあまり関係ないことです。蚊帳の外なのです。プレイヤーキャラは徹頭徹尾ただの下請け、依頼主の進む道を切り開くだけの存在です。パシリです。一方的に用事を押し付けられる、というのがずっと繰り替えされます。そこにプレイヤーの意思は殆ど関わってきません。というかプレイヤーキャラは相槌以外喋りません。プレイヤーの意思に全く関係なく進行する大きな陰謀や作戦を、進行とともにどうでもいいと感じるようになるのは全く自然なことでしょう。
プレイヤーが世界に対して行えることは銃器による暴力だけ、というのも残念です。どんな内容の依頼だろうと、プレイヤーはただ敵を撃つだけです。いちおう本作はRPGを名乗っていますが、純粋なアクションゲームと考えて挑んだほうがいいでしょう。メインミッションとは別にサイドミッションが存在するのですが、これらのうちいくつかは、「フォールアウト」シリーズのような会話主導のゲームだったら本当に面白かったのにな、と思える内容だったので、余計に悲しいです。
移動が退屈なことも気になります。『The Ascent』は多くのツインスティックシューターと違って、直線のアーケード的なレベルデザインを採用していません。本作のゲームプレイは、枝分かれして広がった、殆ど継ぎ目のない、大きなひとつのマップを舞台にして行われます。オープンワールドとは言えませんが、殆どそのようなものです。プレイヤーはこの大きなマップを、ミッション目標に従って右へ左へ、上へ下へと駆け回ることになります。
上に書いたように、このゲームのマップは非常によく作られています。美しい市街を通り抜けるのは楽しいですし、数回往復したくらいで見飽きるようなものでもありません。それぞれの移動距離はたいして長くありません。移動中に挟まれる敵との戦闘も楽しいです。
それでも本作の移動はちょっとしたマイナスポイントです。プレイヤーを走らせすぎなのです。要因は使い勝手の悪いファストトラベルでしょう。本作、メインミッションを進めることで、プレイヤーの現在地点から特定の場所(街など)に移動できる機能が開放されるのですが、これ、妙に小回りが効かないのです。
マップ全体は大きく上下に4つの階層に分かれているのですが、ファストトラベルではこの階層を超えての移動ができません。それぞれの階層の中心にある、隣の階へのエレベーターを使わなければ階層をまたげないのです。だから、実際に別の階層へと移動するならば、ファストトラベルでエレベーターのあるエリアへ移動、エレベーターを使い、次の階層で目的地に向かってファストトラベル、という流れになります。そしてファストトラベルとエレベーター移動はそれぞれ~1分程度のロードが挟まります。これがかなり面倒くさいのです。
移動の全てが退屈なわけではありません。しかし本作のいちばん面白いのは銃撃戦です。ジョギングやエレベーター移動をさせるよりもサイバネちんぴらを撃たせてほしいです。
戦闘まわりも、コアの部分がよくできているぶん、細かい部分の甘さが気になります。種類はあるがたいして差異のないメインの銃火器たち、同じく差異のない防具たち、リトライ時の復活位置が妙に遠いときもあります。特に、難易度の推移の大味さはノイズでした。
メインミッションの途中で、ボス戦にあたる大規模戦闘がいくつか発生するのですが、これがとにかく難しいのです。閉じた大きめのマップで全方向から襲ってくる敵を全て倒すのは普段の戦闘とはまた違う難しさがあります。おそらくこれはマルチプレイ前提の戦闘なのでしょう。「友人と一緒に協力して敵の波を乗り越えましょう」、そういうメッセージを感じます。いや、それ自体はいいのです。しかし今わたしはソロでプレイしています。現在プレイヤーがどういう状況でプレイしているかに合わせて難易度も切り替えて欲しかったです。
特に最終ミッションの最終ボスは問題でした。完全にマルチ専用ステージなのです。簡単に言うなら「ふたりで同時にボタンを押す」ようなステージです。ソロでもクリアできましたが、本当に無理やりで、開発者が想定しているやり方できれいに攻略できた、という感動は殆どありませんでした。
逆に言えば、この欠点はマルチプレイなら殆ど解消されるということです。わたしはレビューにあたって全編ソロで通してプレイ、全くマルチプレイをしていませんが、協力プレイは本作の楽しさを1段階引き上げるということは簡単に想像できます。
本作は、小さいものから大きいものまで、様々なストレスをプレイヤーに与えてきます。じっさい、今回のレビューも不満点が大きく目立つように見えます。しかし本作の戦闘とビジュアルはそれらを跳ね飛ばしてしまうくらいの出来の良さを持っています。ストレスは、美しいサイバー市街でサイボーグに銃弾を叩き込んでいるとどうでもよくなってしまいます。
さて、ここでもう一度、冒頭の文章を繰り返します。
『The Ascent』はちょっと感じの悪い高級レストランの、高級料理のようなゲームです。店の内装はとてもきれいです。出された料理は見た目も味もよいです。しかし店員の愛想はあまりよくないです。店の中をよく見ると掃除が行き届いていない場所があります。キッチンから怒声が聞こえてきます。さて、あなたはそれでも料理を楽しめるでしょうか?
わたしの答えは……イエスです。
このレビューはXbox One Xでのプレイをもとに書かれています。
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