叔母から受け継いだ、ピエロギ | 朝日新聞デジタルマガジン&[and]
ニューヨーカーの“おふくろの味”をつづる「私のファミリーレシピ」。人種のるつぼと呼ばれるこの街で、彼/彼女を形づくる食のルーツを探ります。今回は、エヴァン・ハンサーと、レイチェル夫妻のお話の続きです。
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キッチンでボルシチの準備に取りかかるレイチェル、ダイニングの作業台ではエヴァンがピエロギの生地をこね始めた。エヴァンの母方の曽祖父母はアイルランド出身、父方の曽祖父母はポーランド出身。ピエロギは、父方の家の味だ。
「母方のファミリーレシピもあるけれど、あまり多くはないかな」とエヴァン。じゃがいもが主食のアイルランドがルーツだけに、「母の得意料理は、ベイクドポテトからマッシュドポテトまで、あらゆるじゃがいも料理。ベイキングも得意で、チョコチップクッキーやバナナブレッドを良く作ってくれました」。夕食担当は、主に父親のジョーさんで、ポーランド料理からパスタまで、さまざまなジャンルの料理が食卓に登場したと言う。
ピエロギがテーブルに並ぶこともあったけれど、「店で買ったMrs.T’sっていうブランドの冷凍品。フレッシュな作りたてのピエロギはほとんど食べたことがなかった」とエヴァン。
ところがある年のクリスマスに、叔母のパトリシアさんがお手製のピエロギを振る舞ってくれた。出来たてのピエロギを口にした家族一同は、そのおいしさに感動。「以来、毎年クリスマスに、家族でピエロギを作るようになりました」
ちなみに、本場ポーランドのピエロギの味を知っている祖母のメアリーさんは、パトリシアさんのピエロギを食べてひと言。「『あなたにピエロギの作り方を直接教えてあげられなくて残念だったわ。私たちは忙しかったし、チャンスがなかったのよ』ってね(笑)」。遠まわしのダメ出し。祖母の舌というものは、たいがい厳しい。
叔母パトリシアさんから受け継いだレシピは、もちろん生地から手づくり。ボウルに小麦粉、卵、水、植物油、塩を加え、フォークで混ぜたら、台の上に移して、手で丁寧にこねる。エヴァンの大きな手で10分ほどこねられた生地は、つるりとつやのある、美しい塊に変身していた。これまでエヴァンが料理をする姿を何度か間近で見てきたけれど、彼の手はいつだって食材を大切に、適正に扱う。
生地を寝かせている間に、具を準備する。「ピエロギの具は、ザワークラウト、牛肉、刻んだキルバッサ(ポーランドのソーセージ)などいろいろあるけれど、うちはじゃがいもとチーズだけ」とエヴァン。ゆであがったじゃがいもをマッシュして、チェダーチーズと合わせる。チーズは、「“シャープチェダー”と呼ばれる、通常のチェダーよりも熟成が長いタイプを」とのこと。熟成により、酸味とコクが増しているという。
「このピエロギはシンプルなだけに、特にチーズは味を決める重大な要素。良質なチーズを使うことが、おいしさの秘訣(ひけつ)です」
(「生きる力がみなぎる、赤いスープ」へ続く)
《レシピ》ピエロギ
★材料
(皮)小麦粉 3カップ卵 1個植物油 大さじ1塩 小さじ1水 1カップ
(具)じゃがいも(大) 3個シャープチェダーチーズ(すりおろす) 450g牛乳 1/2カップ塩コショウ 適量ドライプルーン 適量
バター 約110g玉ねぎ(大) 3個塩 適量
★作り方1 皮を作る。大きな浅いボウルに小麦粉を入れ、中央にくぼみを作り、卵、植物油、塩、水を入れ、フォークで混ぜる。この時、小麦粉は一気に混ぜず、少しずつ混ぜこんでいく。ひとまとまりの生地になったら、打ち粉(分量外)をした台に乗せ、こねる。生地の表面が滑らかになり、弾力が出るまで10分ほどこねたら、生地を丸めてボウルをかぶせ、室温で1時間ほど寝かせる。2 具を作る。じゃがいも(皮つきのままでも、皮をむいても)を乱切りにし、柔らかくなるまでゆでる。水気を切ったじゃがいもをマッシュし、チーズ、牛乳と混ぜる。塩コショウで調味したら、粗熱をとる。3 種を抜いたプルーンをぬるま湯に30分ほどつけ、柔らかくなったら粗く刻む。4 フライパンにバターを入れ、薄切りにした玉ねぎを加え、塩をして、あめ色になるまで30~45分ほど炒める。5 1の生地をパスタマシンで均一に薄く4mmくらいに伸ばし(目盛りは6か7)、直径約12cmの丸い形に抜く。皮で2の具(または3のプルーン)をお好みで包む。6 具を包んだピエロギを沸騰した湯でゆでる。ゆであがったら水気を切り、4の玉ねぎに絡める。
レストランEggのウェブサイト https://www.eggrestaurant.com/エヴァンさんのインスタグラム https://www.instagram.com/evanhanczor/
※2020年3月の取材時のものです。
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