Z432Rふう新型:日産 Zカスタマイズドプロト…東京オートサロン2022[デザイナーインタビュー]
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日産は東京オートサロン2022に『フェアレディZ』新型の個性をさらに引き立てる、『フェアレディZカスタマイズドプロト』を展示した。往年の名車、『フェアレディZ432R』を想起させるディテールなどデザイナーのこだわりを聞いた。関連画像を見る◆ピンポイントのフェアレディZにフィーチャー----:東京オートサロン2022において新型フェアレディZの日本仕様がお披露目されましたが、では、このフェアレディZカスタマイズドプロトは、どういう考えのもとに作られたのでしょう。日産グローバルデザイン本部アドバンスドデザイン部主幹の森田光儀さん(以下敬称略):そもそも新しいフェアレディZは、過去のヘリテージをきちんと振り返って、その歴史を大切にした上で形作ってきたものです。もともとが過去のヘリテージへのオマージュがあるのですが、Zにはファンの方々がたくさんいらっしゃって、いろんなZ像を思い浮かべられるでしょう。例えばレースで勝っていたZ、サファリラリーで走ったZ、伝説のZ432Rや、Zノーズのマルーンの240Zとかいろいろなイメージがありますよね。つまり一口にZといってもその世界観はすごく幅が広いんです。そこで、これから新型Zを私たちが世の中に送り込むにあたって、それをベースにしたカスタマイズの仕方、アクセサリーなどを用いてちょっと違う世界観の展開の仕方、広げ方の1つの例がこのカスタマイズドプロトだと位置付けています。見ての通りおそらく基準車よりももっとヘリテージを強く感じられるでしょうね。Z432Rがオレンジ色なのでそれを感じさせています。我々の世代ですとみんなS30に憧れた世代で、ミニカーはいっぱい買ったし、プラモデルもいっぱい作りました。そのZの方向性の究極である姿(Z432R)をイメージして、新型をカスタマイズしたらこうなるんじゃないかという例なのです。例えば基準車のZよりも真正面から見たときに、グリルの上と下が別になっていて、水平のキャラクターが入っています。一方の基準車はフロントのラジエーターグリルを一枚の面として捉えて作っているのです。これがモダンさなどの表現になっているんですけど、こちらはもうちょっと愚直に、どちらかというと昔のクルマの形の作り方の作法に近く、全部水平に立体を展開して、えぐってエアダムを出すというような、本当に昔のレーシングカーっぽいですよね。それを気持ち良く作ったらどうなるかというトライです。同様にサイドにも黒いストライプを入れていますけど、バンパーからサイドを通りリアホイールに抜けていくイメージも強調しています。クルマの作りとしては基準車とは対照的に水平の基線を強調したデザインで、昔のクルマはストライプのところにサイドモールがあったり、必ずディフレクションがあったりとかしたものですけれども、そういうものを現代的にモダンにもう1回解釈し直して作ったというのがこのスタイルです。----:オーバーフェンダーにもしているんですね。森田:実際全高も20mmサスペンションを下げていて、タイヤのサイズもリアは特にファットで、基準車の275から285にしています。そして片側30mmトレッドが広がっていて、それをカバーするオーパーフェンダーをつけました。いまはミニマルなデザインがトレンドですから、例えばオーバーフェンダーもボディに綺麗に馴染ませていくのが普通だと思うんですけれども、あえて後付けの力強さやパワフルさ、そして昔からあるクルマの記号性、普遍的な価値みたいなところを訴えるのに、フェアレディZは1番良い素材だと思うのです。そして、幅広いフェアレディZのイメージをベースに色々な突き詰め方があるわけですから、その中の1つとして、従来的なクルマらしさの価値を強調していったらどうかなというのがこのコンセプトモデルです。ホイールも見ての通りで、軽量で高性能な鍛造ホイールを持つ基準車に対して、こちらはもうちょっとパワー感や、力強さですよね。そういったものを感じさせるような、そして、どこかで見たことがあるような雰囲気があるかもしれませんが、基準車とはちょっと違う魅力の訴求の仕方をトライアルしているのです。このコンセプトモデルでいえば、例えばパッケージでバンパーとホイールとリアポイラーとセットにしてご用意出来れば、基準車のZを買われたお客様の中で、この世界観に共鳴していただける方に向けてのひとつの例です。まだ決まってはないんですけれど、今回反響を見てぜひ考えていきたいですね。◆メーカーでやる意味----:ここまでやるからには当然インテリアにも手を入れたくなりますね。森田:そうですね。ただ我々メーカーがやる意味は、単純に回顧主義的に、昔の作法をそのまま入れるのは我々の役割ではないかなと思っています。ちょっとクラシカルに感じる、そのスピリットはそうですけれど、あくまでデザインの処理としては、これから出すクルマですから、モダンで新しいテイストは意識してやっています。----:その新しいテイストはどこでしょう。森田:例えば、リアはスボイラーが大型化され、幅も広がっていて高さも高い。そして後ろを黒くしているのはZ432のやり方なんですね。このあたりは私ぐらいの世代の人が見ると、ふふって思うようなトリートメントです。マフラーもFUJITSUBOと共同で作ったのですが、フィニッシャーの形が見る人が見ればわかる、Z432の縦二連のマフラーをイメージしています。こちらは両側出しになってますけど、中央で二分割になっていること自体が、記号性としてヘリテージを反芻したものという処理です。そして、新しさという意味では、基準車に比べれば後付け部品は付いてますけれども、デザインの作法としては、面の数は出来るだけ少なく、ミニマルに、いまの時代にあったシンプルなまとめ方を取り入れています。スポイラーの面の数も最低限の枚数、3面ですし、フェンダーも、昔と同じようにビス止めしてという世界観で訴求していくのもやれば出来るのですが、今回はごくシンプルに1枚の面で作っています。そのように、シンプルで、余計な装飾的な面を入れないという、日産デザインの考え方に沿っていますので、そのあたりがモダンに見せているところです。◆大喜びで----:実際にこのクルマをデザインしての感想を教えてください。森田:フェアレディZの仕事そのものに対して、我々の思い入れも、愛もすごくあります。ですから我々ぐらいの世代の人間がこのクルマに関わることが出来ると聞くと、チームとしてもものすごく、ほんとうに大喜びでやるんですよ。モチベーション高くやれるクルマはなかなかないと思うんですよね。それは我々の財産だと思っていますし、宝だと思うんです。僕もやっとこの年になってスポーツカーの仕事が出来るっていうは、ものすごくいま幸せを感じています。実は3年前からNISMOのロードカーのデザインと、アクセサリーを全部見ています。いまのメインの仕事はNISMOなんです。NISMOのチームは当然スポーツモデルを作っていますのでスポーツカー作りは慣れています。ですから、こういうZのカスタマイズをやろうと思うとスポーツカー作りに慣れた連中に声がかかるわけです。いつもは空力だとか、軽量化だとか、もっとファンクショナルな視点で作ってるのがNISMOなんですね。しかし、今回はそういうことを一切置いておいて、昔のZを知っている人たちが見て、ああっ!て思える、ストレートに思える世界観作り、そういうエモーションから先に入ったのが今回の仕事です。----;デザイナーさんとしてはやりがいがありましたね。森田:やりがいというか、楽しいですよね。一番気持ちいいっていうのかな。格好良いと思うクルマを作ればいい。多分それだけなんです。そんな幸せな仕事は普通なかなかないですよね。実は以前は現行『リーフ』のデザインをやっていまして、あと『デイズ』や『ルークス』も担当しました。日産自動車にいると軽自動車から電気自動車、フェアレディZから『GTR』から、NISMOまでデザイン出来るんです。さらにGTカーの開発にも関わったりして。カーデザイナーとしてこんなに幅広くやれる幸せはありませんよね。そういった色んなことで培ってきたノウハウが、たくさん生かされています。本当に楽しい仕事でした。なんとかこれをお客様のところに、これに近い姿でお届け出来たら良いですよね。今回もいろんな方に見ていただいて、すぐ欲しいって声をたくさんいただいて、大変ありがたいです。
レスポンス 内田俊一
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