使い捨てプラ容器問題、日本より厳しいEU規制 環境にやさしい素材への転換期 - 日本食糧新聞電子版
日本で2022年4月から施行される予定の「プラスチック資源循環促進法」は、プラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的としている。一方、同じくプラスチックごみ問題を解決するために、EU(欧州連合)では2022年から皿やコップなどへの使い捨てプラスチックの使用が完全に禁止される。世界中で環境への緊急課題となっている海洋ゴミ問題について、日本とEUの対応について紹介する。
日本ではリサイクルが優先
私たちのライフスタイルにおいて大量に出てくるプラスチックごみが、海洋汚染を中心とした環境問題、海洋生物そして人間の健康にも悪影響を及ぼし、気候変動にも関連があるとして、現在、世界中の緊急課題である。
新法では、プラスチック製品メーカーに対し、指針に対応したリサイクルしやすい設計の製品を認定する仕組みを作るほか、飲食店など使い捨てのプラスチック製品を多く使用する事業者に、使用の削減を求めるものである。
「プラスチック資源循環促進法」はプラスチックの3R(リデュース=削減)(リユース=再利用)(リサイクル=再資源化)に加え、(リニューアブル=再生可能)を掲げているが、実際の内容を見るとリサイクルが最優先されていて、肝心な削減の優先順位が低いのでは、という疑問の声もあがっている。
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EUでは使い捨てプラスチック食器の使用を禁止
一方、EUでは2019年7月に「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」が発効し、EU各加盟国がこの指令を各国法制化することで、7月3日から指令の一部適用が開始された。使い捨てのプラスチックや発泡スチロールで作られた食器や食品容器の市場流通を禁止などに関するものである。
食品関係ではプラスチック製のストロー、マドラー、カトラリー、皿のほか、発泡スチロール製の食品容器、飲料容器(キャップ・ふたを含む)、飲料用カップ(カバー・蓋を含む)。また、使い捨てか否かにかかわらずオキソ分解性プラスチック製の全製品が禁止の対象である。
ずいぶん厳しい指令のようだが、現在の海洋ゴミの80%がプラスチック製品であるとの認識であり、問題解決には早急にリデュース(削減)が必要という方針。加えて、飲料用カップなど特定の使い捨てプラスチック製品には、プラスチックの含有情報や廃棄物管理方法などに関するラベル表示の義務化も開始している。
紙製品の使用促進や生分解性プラスチックの開発も
日本に比べてかなり厳しく感じられるEU指令だが、昔ながらの紙やガラス、陶器、布などの自然素材や、微生物による環境中での水と二酸化炭素への分解が可能な「生分解性プラスチック」などの開発も続けられており、実際のところ代替案はいくらでも豊富にある。
例えば、イタリア人の食生活に欠かせないパスタの梱包も、最近では紙製を使用するメーカーが増えている。また、イタリアのコーヒーショップ(バル)では持ち帰り用のコーヒーに、現在ではどこでも紙コップを使用している。スーパーマーケットでも使い捨てプラスチックの製品が姿を消し、紙などの製品に置き換わっている。
欧州委員会は「プラスチックは便利な素材であるが、環境に大きなダメージを与え、さらに観光、漁業、輸送などの経済活動にも損害を与え、また、その処理にも高額の費用がかかる」という点を指摘している。使い捨てのプラスチック製品を使うよりも、環境にやさしい素材を使う方が、長い目で見ると効率的ということである。
EUは新指令の実施後、欧州の海岸のゴミが70%減少と推計している。今後の各国の動向に注目したい。(フードライター 鈴木奈保子)
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