＜脱プラスチック＞前編　使い捨て、生態系に影響：中日新聞Web logo-en-hatena logo-en-twitter logo-en-facebook logo-en-line logo-chunichinp

沿って 27/01/2023 571 ビュー

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速報

2021年5月30日 05時00分 (5月30日 05時00分更新)　レジ袋にペットボトル、日用品と、私たちの暮らしは便利で丈夫なプラスチックであふれています。ところが、プラスチックのごみは海を汚し、生態系にもさまざまな影響を及ぼしています。そもそも何が問題なのでしょう。プラスチックごみの削減を目指す一人の高校生の運動から考えていきます。　（福沢英里）　三月中旬、名古屋市中心部の栄。環境団体の活動として愛知県立高校三年、原陽南乃（ひなの）さん（１７）がマイクを握った。使い捨てプラスチック削減のアイデアとして、繰り返し使える蜜蝋（みつろう）製のラップを挙げ、その有用性などを明らかにした実験結果も紹介した。　原さんは、レジ袋削減に取り組む別の国際団体の名古屋支部代表に就き、オンラインのイベントを開いて海外の対策も学ぶ。「積極的な国ほど、減らすために何をするかが明確だ」ときっぱり。海岸清掃に参加したり、沖縄の西表（いりおもて）島や北海道の知床など自然豊かな場所へ足を運んだり、環境保護の思いを強めてきた。だが「プラスチックごみの問題はなかなか解決されない」ともどかしさも感じている。

生産量、５０年で２０倍

　国立環境研究所・資源循環社会システム研究室（茨城県つくば市）の田崎智宏室長（４８）は「世界的にみると、プラスチック生産量は一九六四年からの五十年で二十倍になった」と指摘する。爆発的な増加に伴い、海や河川などに散乱する量が増え、景観だけでなく生態系や生物に悪影響を及ぼしている。そもそもプラスチックは腐って土に返ることはない。分解されずに自然界に残り続ける。　日本のプラスチックごみの海洋流出は国の推計で二万〜六万トン。プラスチック循環利用協会（東京）の調べでは、二〇一九年に国内で排出されたプラスチックごみは八百五十万トンなので、０・５％程度にすぎない。「ほんのわずかな環境への流出でも大問題。そういう構造だと知ってほしい」。プラスチックごみは１００％に近い回収を徹底しないと解決しないのだ。

エネルギー回収の割合が高い

　国内のプラスチックごみ処理の内訳をみると、リサイクルよりも「エネルギー回収」の方が割合が高い。焼却熱のエネルギー利用（温浴施設の熱源など）や発電による一回限りの活用を指し、プラスチックを燃やせば温室効果ガスを排出してしまう。資源循環や環境の視点から考えると「有効利用しているからいいのか」と指摘する声もある。　田崎さんは「使った後の後始末を考えるのではなく、大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会を見直し、プラスチックの使用を減らすことが先決」と強調する。政府は一九年、「プラスチック資源循環戦略」を公表している。

広がる代替品　ごみ拾いのスポーツも

　レジ袋の有料化から間もなく１年。プラスチックの使用量を減らすため、一人一人ができることは何か。プラスチック廃棄物の削減を促す法案を審議中の衆院環境委員会で、食べられるスプーンや食器が取り上げられた。いずれも、プラスチックの代替品だ。　社員食堂を運営する「勤労食」（愛知県刈谷市）の食べられるスプーン「ＰＡＣＯＯＮ（パクーン）」は小麦粉が主原料で、クッキーのような食感。アイスクリームやカレーを食べるときに活躍しそう。割高という価格面の課題はあるが、学校などでの活用が期待される。　ごみ拾いとジョギングを組み合わせたスウェーデン発祥のスポーツ「プロギング」は若者に人気。名古屋市も２０２０年秋から月１回ほど開く。路上に放置されたごみが海に流れ、極小のマイクロプラスチックになれば、海を汚す。この削減にもなると注目を集める。

用語チェック

　プラスチック資源循環戦略　政府が２０１９年５月、使い捨てプラスチックの使用を減らし、資源の循環を進めるために公表した総合対策。リデュース（発生抑制）、リユース（再利用）、リサイクル（再資源化）に加え、バイオマスプラスチックなど再生可能な生物由来の資源活用が基本原則。レジ袋有料化の義務化を明記し、「２０３０年までに使い捨てプラスチックを累積２５％排出抑制」など、具体的な数値目標も盛り込んだ。