カビに「水拭き」「こすり洗い」は逆効果、抹殺方法と増やさないコツは?(藤原千秋) - 個人 - Yahoo!ニュース
そもそもカビとは何なのか
6月といえば梅雨、梅雨といえばカビ。連想ゲームのようですが、「梅雨」は「つゆ」だけではなく「ばいう」という読み方もされ、「ばいう」には「黴雨」(カビの雨)という書き方もあるので、それもさもありなんです。
そもそもカビというのは何なのでしょう。私たちは子どもの時分から、健康に害を及ぼしそうな微小な存在をザックリ「バイキン」と呼び習わしていたりしますが、「バイキン」を漢字で書くと「黴菌」。つまり「カビ(黴)」と「菌」。「菌」はおよそ「細菌」を指しています(が、細菌に対してカビは後述のように「真菌」とも呼ばれるため、いささかややこしいです)。
かくカビと細菌はなにかと一緒くたに扱われがちですが、生き物としては全く異なる存在で、カビは細菌の誕生から13億年ほど経て地球上に登場した、だいぶ進化した微生物であり、やや植物に近しい性質を持っています。
基本的には遺伝子を保存した植物の種のような「胞子」を飛ばし、運ばれた先で「発芽」して、そこで根や茎のような「菌糸」を伸ばして生育します。ただし植物のように光合成はせず、外部から栄養を摂取する必要があります。このようなしくみの生物に「きのこ」や「酵母」があり、「カビ」とまとめて「真菌類」といいます。
真菌はエサとなるものを、分泌する酵素で分解して栄養とし、体内に取り込みます。エサとなるものには他の生物の遺骸などがあり、そのため「自然界の掃除屋」といった存在意義がありますが、人間側から見れば分解して欲しくないものにも環境が整えば取り付いて増殖します。
カビの育つ条件とは
カビにとって整った環境とは? 実は8万種以上もあるといわれるカビの種類によっては、かなり極端な環境でも耐えられることがあるため一概にはいえないものの、私たちの生活環境内で目にしやすい種類のカビに限って言えば、最適な気温が25〜28度、最適な相対湿度が60〜80%、あとは酸素とエサとなるものがあることです。エサはセルロース、糖質、タンパク質などが代表的なものですが、そこには私たちの生きた身体そのものも含まれるので注意が必要です。
カビの害とは
実のところ、たとえばちょっとやそっとカビのついた食べ物を食べても、私たちはあまり直ちに影響を受けることはないようです。しかし「カビ毒」というのは時間をかけて健康被害を引き起こすことがあるのでゆめゆめ軽視はできません。
またカビの胞子を吸い込んでしまうことによってカビ性肺炎を起こしたり、皮膚に生えればフケ、水虫やカンジダ症といった症状を起こすということもあります。鼻炎や喘息などのアレルギー症状の原因にもなります。アレルギーの場合症状自体は花粉症などのそれと似ているので、なかなか花粉症が治らないと思っていたけど、カビのせいだったということもあります。住まいのカビを生えるがままに放置することはできないわけです。
暮らしの中でのカビ
とにかくカビといえばお風呂! 浴室のタイル目地! のような刷り込みがどこかにあるせいか、あまり暮らしの各所で生えるカビの存在に対してアンテナが立っていない人が多いようです。しかしカビの最適環境条件から言えば、カビはいわゆる「水回り」だけ対策すればいいというものではありません。特に近年の「高気密・高断熱」の住まいはカビが蔓延しやすく、居室であってもかつては浴室などにしか生えなかったカビが見られるようになっています。
カビはある日突然ゴソッと生えるわけではなく、ジワジワと殖えていきます。目に見えてわかる状態というのは「かなり」な状況なので、そうなって尚、存在を無視してほったらかしにしないことが大切です。
盲点?になりやすいポイントも含めて、暮らしの中でカビのよく見られる箇所は以下のようなところです。各々気をつけて見てみてください。
<居間、寝室など居室>
・カーテン ・ガラス窓のサッシのコーキング部分 ・ベッド(マットレス) ・ベッド(枠) ・ベッド下の引き出し内部 ・ふとん(掛、敷) ・観葉植物周り ・クローゼット内部 ・押入れ内部 ・畳 ・和室などの造作木部 ・たんす(特に引き出し最下段) ・客用ふとん
<キッチン>
・冷蔵庫野菜室 ・冷蔵庫自動製氷装置(水タンク) ・冷蔵庫ドアパッキン ・冷蔵庫内の食品(謎の瓶詰めなど) ・食器(陶器、竹製品) ・まな板 ・食器カゴ ・弁当箱パッキン ・水筒パッキン ・トリオセットなど箸箱の二重部分 ・箸立て
<洗面所>
・洗濯機内の洗濯槽 ・洗濯機の洗剤投入口 ・洗濯機パッキン(ドラム式) ・洗面台オーバーフロー穴 ・歯ブラシ立て ・バスマット ・バスタオル
<浴室>
・風呂蓋 ・棚 ・椅子 ・シャンプー等のボトル下 ・いつから置いてあるのかわからないヘチマや海綿 ・掛け算九九表など壁に貼るシート ・子供用おもちゃ ・天井 ・換気扇フィルター ・浴槽エプロン裏
<トイレ>
・トイレタンク内部 ・タンク裏 ・便座裏
<玄関>
・革靴 ・傘 ・傘立て
<その他>
・布おむつ ・パッドの厚いブラジャーなど下着 ・中高生の体育着や柔道着 ・運動靴 ・エアコン内部 ・除湿機内部 ・加湿器内部 ・掃除機内部
カビ抹消の対策とは
基本的にカビを見つけての「水拭き」「こすり洗い」「洗剤(界面活性剤)洗い」等だけでは、栄養や水を与えて逆に増やしかねないので対策になりません。注意してください。
浴室、キッチンなどの、後で水で濯げる箇所のカビについては、市販の「次亜塩素酸ナトリウム」を主成分としたカビ取り剤(塩素系漂白剤)でカビを酸化分解して殺し漂白することができます。
洗えるという点で言えば、布物などに生えたカビも、繊維が白い木綿やポリエステルなど、ある程度の強アルカリに耐えられる素材の場合は塩素系漂白剤が使えることになっています。ただし、カビが生えた時点で繊維の「分解」が始まっているということなので、カビが取れた後に穴が開いたり、破けたりする可能性があります。
布でも、色柄物やタンパク質の絹、羊毛などには塩素系漂白剤は使えません。カビ取り剤を使ったカーテンのカビ落とし術などしきりに喧伝されていますが、それを試す場合は自己責任で、くれぐれも事故のないよう気をつけてください。
マイルドなアルカリの過炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤)を使って、初期のカビであれば落とすことができることがあります。また木綿の布おむつなどのカビでは、酸素系漂白剤と石鹸水で煮て洗うという方法もあります。
洗濯機の洗濯槽のカビには、市販の洗濯槽クリーナーを使用します。洗濯機が縦型かドラム式かによって、塩素系、酸素系かに分かれ、使用できないケースがあるので購入の際にはしっかり確認してください。
水で濯げないその他の箇所に生えたカビに関しては、「消毒用エタノール」を噴霧するか拭き取り処理します。アルコールがカビの細胞壁にリーチしタンパク質を変性させることで殺すことができ、かつ揮発性が高いために短時間で乾燥するので拭いた場所に水気を残さないメリットがあります。ただし拭くのに使った布などは再利用せず必ず捨ててください。また消毒用エタノールには漂白効果はないので、拭いても色素は残ります。念のため。
カビを増やさないためには
セルロース、糖質、タンパク質といったエサになるものや酸素は私たちの暮らしから一切なくすわけにいかず、カビの最適温度も私たちの快適環境と重なります。そのため唯一対策が取れるのは水のコントロール、余計な水気を残したり、過剰に湿度を上げたりしないようにするということだけだといえます。
そのためカビを増やさないためには、日常生活の中での「温湿度計」設置、湿度チェック、湿度コントロールを意識し、屋内の相対湿度が60%を大きく超えないように調整するようにしてください。年間通して加湿器の使いすぎに気をつけ、適度な換気を行い、汗がこもるふとんやベッドなどは定期的に干すか、ふとん乾燥機にかけるようにしましょう。
もっともカビの温床になりやすい浴室ではできるだけ24時間換気扇を稼働させるようにします。浴室に窓がある場合にも換気扇を併用したほうが乾燥します。
また、梅雨時は洗濯物の部屋干しが増える時期ですが、洗濯物を寝室に干すのも避けてください。ふとんが水分をよく吸いますので洗濯物は乾きます。が、ふとんがカビます。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】
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